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【社長のつぶやき】一人社長が自力で法人決算と法人税申告をする方法(体験談)

ビジネス
決算と税申告

 法人の決算は自力では難しいので巷では税理士必須ということが常識になっています。個人の確定申告を処理できた方でも法人の申告は複雑で解読不可能などという情報が溢れています。私は昨年、一人で合同会社を立ち上げて最小コストで法人経営する方法を模索してきたのですが、法人決算と法人税などの税務申告も自力で完遂できるはずだと思ってチャレンジしてみました。

 結果、なんとか完遂できたので自分の備忘録として残しておきます。*こちらの情報は当時の情報ですので最新情報はご自身で確認をお願いします。また、あくまでも体験談ですので当該情報に基づくトラブルや損害等については一切責任を負う事はできかねます。何卒ご了承ください。今回は赤字決算でしたので入力箇所が黒字決算に比べて少なかったと思います。黒字決算の場合はもう少し苦労すると思います。

この記事を読んでほしい対象者

  • 合同会社を立ち上げようと考えている/立ち上げた一人社長
  • マイクロ法人で最小コストで会社運営をしたい社長
  • 法人の決算や税務申告を税理士に頼らずに自力、セルフでチャレンジしたい方

全体像

 大まかにいうと下記の4つのステップです。

  1. 仕訳をやりきる
  2. 決算処理
  3. 税務申告
  4. 納付

 主観ですが難易度は③がMAXです。①が苦手な方もいるかと思いますが①はコツコツやるタイプの事務処理です。②は会計ソフトが9割くらい自動的にやってくれます。③は書類が10から20くらいあってそのうち3つくらいは税務特有の考え方が必要になるのと、書類間の相関関係を解読する必要があるので難しく感じました。ただし、一度やってしまった後、振り返ると、次回も赤字だった場合は同じ処理を行えばいいので難しく感じないと思います。④は支払い処理なので簡単です。(ただし金額が大きくなるのでお得な方法での支払いを行いたいところです。)

1.仕訳をやりきる

 私は「弥生会計オンライン」という会計ソフトをクラウドで利用しています。PCにインストールする必要はなく、インターネットに接続できる環境で一般的なブラウザが起動すれば利用できます。売上を計上したり経費を計上したり事業活動で生じた会計上の取引を仕訳していきます。私は毎月月末月初に月次処理をしていたので期末決算月も同様にまず月次処理を行いました。ここで漏れがあると以降の手順は修正が発生するのでひとまずやり切りました。効率的な処理の仕方は別途お知らせしますね。

2.決算処理

大まかに2つあります。

①決算整理仕訳をする

②決算書を作成する

2.1.決算整理仕訳

 主に当期のP/LやB/Sに影響するものを確定させる処理を行います。ちなみに、私が使っている弥生会計オンラインではメニューの決算処理の中で決算整理をガイドしてくれますので安心して進められました。

 具体的には、まずは事業年度をまたいで費用計上する仕訳場合に当期分の費用計上と来期分(短期)およびその次の期以降の分(長期)に分ける処理です。日頃の仕訳処理で意識的に分けて仕訳していれば期末にやる必要はないはずです。また、未払い費用を当期に計上することもやってもいいですが、あまり重要でない費用は毎月の計上ルールを決めておけば特別なことは不要のはずです。収益についても費用と同様に当期に計上するべきものは計上します。

 次に、減価償却です。一般的には30万円以上の資産を購入している場合、定率法で当期分の費用を期末に計上します。会計ソフトに必要事項を入力すれば自動計算してくれます。今期は在庫販売はしていないので棚卸はしませんでしたが棚卸評価も重要な決算整理です。

 ほかに私がやったことは、法人で運用している米国ETFの評価益の計上処理です。これは長期保有前提の投資有価証券に対してその他有価証券評価差額金という勘定科目で仕訳することでB/Sに計上するものです。(これはP/Lに影響しないので税金には影響しない認識です。短期保有前提の場合は仕訳方法が異なり、期末に損益を計上しないといけないので注意が必要です。)

 消費税は前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者が対象なので私の場合は対象外です。

 法人税などの税金関連の仕訳処理についても会計ソフトのガイドに従って仕訳します。順序としては税務申告の申告書を作成することで税金が計算できるので、ここでは仮計算して法人税、住民税及び事業税に対して未払い法人税等というという勘定科目で一旦仕訳しました。(法人の場合赤字であれば法人住民税の均等割りが県と市町村それぞれに対して発生しますのでホームページ等で金額を確認してから初年度の事業期間に応じて月割りして計算しました。)

 また、私の場合、さらに米国ETF配当金の源泉所得税国内分を所得税額控除することで還付を受けることを考えていましたので、未収還付法人税という勘定科目に対して振替する仕訳を行いました。外国税源泉徴収額については外国税額控除という制度があるのですが所得税額控除と違って控除する対象として所得税を納める金額がある(黒字である)ことが前提になっているのと、3年の繰り越しもあるようなのですが、見込みが立たないので控除適用をあきらめて今期は損金扱いとすることとしました。来期は利益を出して適用できるといいのですが、複雑ですね。(間違っていたらごめんなさい。。。)

 そうそう、最後の段落の中で「損金」という言葉が突然でてきましたが、これは会計用語ではなく税務用語です。税務申告の手順の中で触れたいと思います。

2.2.決算書の作成

 ①決算書はB/S(貸借対照表)、②P/L(損益計算書)、③社員資本等変動計算書、④個別注記表を作成します。

 私が使っている弥生会計オンラインではほぼ自動的に作成されました。一応保管義務があるのでPDFをクラウド上に保存しておきました。

 ④については、記載事項を追記しないといけないので少々調べる必要がありました。

 まず、”この計算書類は「中小企業の会計に関する指針」によって作成しています。”という文言を記載しました。この「中小企業の会計に関する指針」(発行元:日本税理士会連合会等)は、中小企業における細かい会計上のルールが書かれているのでざっと目を通して関係ありそうなところを理解することをしました。

 私の場合は、資産の評価基準及び評価方法、固定資産の減価償却の方法、消費税は税込み経理方式の3点についてさらに追記しました。追記したといっても先ほどの指針の中から適用したルールを抜粋・要約した程度ですし、念のため基本ルールを変更していませんということを宣言したに過ぎないので書かなくてもいいかもしれません。

3.税務申告

 ざっくり以下の流れで進めました。

  1. ソフトのインストールとマイナンバーカード等の環境準備する
  2. e-Taxソフトにて法人税など国税向けの各種帳票を作成する
  3. eLTaxソフトにて地方税向けの各種帳票を作成する
  4. 決算修正と確定を行う
  5. 財務諸表をe-Taxに読み込む
  6. 電子申告する
3.1.ソフトのインストールとマイナンバーカード等の環境準備

 e-taxやeLtaxは国税と地方税とでそれぞれPCインストール用のソフトをインストールする必要があり、事前に環境を整えておきます。Web版では帳票作成できないので従うしかありません。逆にソフトをインストールすれば、いちいち税務署に行って書類を入手する必要はありませんし、高額な税務申告ソフトを購入する必要もないことがわかりましたし、最後は作成した帳票を電子署名して電子申告できました。一度やってしまえば次回以降はとても簡単です。

 また、私はアンドロイドスマホでJPKIというアンドロイドソフトとPCソフトそれぞれでBluetooth通信してマイナンバーカードを電子署名用に使う方法を試みたのですが、e-taxでは成功しますが、eLTaxでは利用者登録の際にJPKI非対応(2024.5.31時点)で先に進めませんでしたので、やむを得ずアマゾンで千円くらいのICカードリーダーを購入しました。そうすることで無事eLtaxでも電子認証できるようになりました。(ほんと基盤となる認証環境くらいは国と地方で統一してほしいものですね。。税金の無駄遣いです。また最初は原因不明で時間をロスしてしまいました。)

3.2.e-Taxソフトにて法人税など国税向けの各種帳票を作成

 e-Taxソフトで法人税申告をするべく進んでいき、作成する帳票を選択欄から追加するのですが、たくさんの「別表」と呼ばれる帳票があり、くじけそうになりました。私は「全力法人税」というソフトを作っている会社が提供しているWebの説明をじっくり読んで理解に努めました。そうすると何が必要な帳票なのかはわかるようになりました。赤字経営の場合の記載例も充実していて本当に参考になりました。

 結局は、e-TaxやeLTaxソフト上で必要な帳票を追加して、該当の帳票の入力欄に入力していけばいいということがわかりました。勘定科目内訳明細書や法人概況説明書もe-Taxソフトで入力できます。

 ただし、実際にデータを流し込んで全力法人税のWebサイトでPDFを個々に作成してみると、どんな感じで入力すればいいのか、有料版を購入せずとも無料で作成できますので無料でできる範囲で出力のイメージを試しました。全力法人税は最後にまとめて帳票出力する&電子申告をそのまま行うというところに有料版の付加価値を設定しているようです。(私は最後の有料のところはe-Taxクライアントソフト、eLTaxクライアントソフトにてコピペもしくは手入力しましたので実質無料、いやICカードリーダー代のみでした。)

 税務申告の帳票作成の具体的なアドバイスについては税理士の特権の範疇とのことですので、ここでは、帳票作成内容を具体的に述べられませんが、私は上記の全力法人税をメインの拠り所にして、わからないところはほかの情報をあたったり、9割がた自信を持てたところで、一旦e-taxソフトからPDF出力して印刷し、税務署に予約して法人担当の方に対面で事前に洗い出しておいた疑問点をぶつけて確認しました。そうすることで一定の安心が得られました。私が作成した帳票は以下のとおりです。おおむね下記の順番で作成しましたが、別表5(2),(1)、別表4、別表7、別表1は行ったりきたりしました。他の帳票は申告する内容によって作成対象が異なると思いますのであくまでも私の場合ということです。

別表2
別表15
別表16⑵
別表16⑹
別表6⑴
別表5⑵
別表5⑴
別表7⑴
別表4
別表1
勘定科目内訳明細書(該当する勘定科目)
法人概況説明書

ポイント1

一旦、税金を計算するためにの作業をやって、税金を確定させてからもう一度決算処理に戻って税金の会計上の仕訳を確定させることで、決算書も確定になるよ。

ポイント2
税務の考え方についても大事だよ。会計上は利益と損失という概念が、税務上は益金と損金という概念になるよ。利益という会計上の概念から益金や損金をプラスしたりマイナスしたりして税務上の所得を求めてそれに対して税率をかけて税金を求めるというのが基本的な考え方。それらのプラスマイナスするべき対象をしっかり確認しておくといいよ。

 私の場合は、米国ETF配当金で源泉徴収されていた国内所得税について所得税額控除による還付を受けるため、未収還付金(源泉所得税)が損金不算入に該当し、これに伴って別表5(2),別表5(1),別表4の各帳票に記載するべき事項がありましたのでそこは税務署の法人担当の方との相談においてもしっかりと確認しました。(むしろ、還付を受けないこととした外国税源泉徴収額の扱い方を間違っていました。本当は外国税源泉徴収額を損金算入の扱いにしたかったのですが、別表5(1)や別表4には書く必要がないのに誤って記載してしまっていました。最終版では削除して提出しました。)

 別表5(2)、別表5(1)、別表4以外にも帳票はたくさんありますが、全力法人税を参考にしながら必要事項を淡々と埋めていくといった印象です。

3.3.eLTaxソフトにて地方税向けの各種帳票を作成

 私がeLTaxソフトで作成した帳票は以下のとおりです。赤字決算なので該当する地方税は法人住民税の均等割りという種類の税金になります。県向けと市町村向けの2種類それぞれ作成しました。これらも「全力法人税」Webサイトの説明(県民税)(市町村民税)が参考になりました。

【地方税】第6号様式 (県民税)
【地方税】第20号様式 (市町村民税)

3.4.決算修正と確定

 もう一度、決算処理の決算整理仕訳に戻って、税金にかかわる仕訳を修正・追加を行い、決算処理を再度行い確定させます。税務関係の申告書を作成して税金の計算を詳細に行ったことで初回の決算で仮計算した税額と異なることがあるようです。修正がなければそのままです。私の場合は期初の事業開始日が中途半端な日からスタートしたので月割りの計算をやり直したのでここで修正が入ってしまいました。(月初1日スタートよりも2日目以降にしたほうが1か月分均等割りを節税できるようです。)

3.5.財務諸表をe-Taxに読み込む

 e-Taxソフトでは財務諸表をCSV形式のファイルで読み込ませると、最終的にXBRL形式という形式に自動的に変換してくれて電子申告できるようになるのですが、この読み込ませるためのCSV形式を作成する必要があります。

 会計ソフトでは、財務諸表をXBRL形式に変換してくれてそのまま電子申告できるものもあるようですが、それらは別料金になっていたり追加出費が発生してしまいます。なぜXBRL形式にしないといけないのか?と思ってしまいますが、これは国税指定の形式なので従うしかありません。

 要はCSV形式のファイルを作ればいいのね、ということで、これも多少骨が折れますが、骨が折れるだけですのでやってしまいました。(別表5とか別表4の考え方を習得する苦労に比べればまだましな方です。)

 e-Taxのページに説明がありますが、いくつかやり方があり最短距離がわかりにくいサイトになっています。私の感想では、最短距離は「標準フォームからe-Tax指定のCSV形式データを作成する」の欄をやっていけば最短になると思いました。とりあえずこのページの中程にある「標準フォームからe-Tax指定のCSV形式データを作成する」欄から、「標準フォーム」をB/S、P/L、社員資本等変動計算書、個別注記表の4つについて、それぞれダウンロードします。そして先ほどのダウンロードしたページのすぐ下に、解説動画が掲載されているのでそれに沿ってまずやってみます。

ポイント

Excel必須みたいな説明になっているけど、無料のGoogleスプレッドシートで対応できるよ。GoogleスプレッドシートではアップロードしたExcel形式を開くことができるし、フィルタも同じように使えるし、入力が終わったらCSV形式でダウンロードできるよ。

ポイント

階層構造になっているのだけど、見出しには数値は入力せずに、ブロックの末端の行に見出しと同じ名称がでてくるから、そこに合計数値を入力する構造になっているということなので、それぞれの項目が必要になります。これを理解しておくとスムーズに項目のピックアップと入力ができるよ。

 1ファイル作成したら、ダウンロードしたところのさらに下の方に「CSVファイルチェックコーナーを利用する」というのがあるので、ここにアップロードしてエラーチェックを行います。チェックOKになれば当該ファイルをダウンロードしなおすボタンが出てくるのでダウンロードしておきます。その後、e-Taxソフトを開いて財務諸表を「組み込む」ボタンを押して作成したファイルを読み込ませると申告用のXBRL形式のデータができるし、e-Tax画面上でも中身を確認したりPDF出力できるよ。

重要

あ、Windowsではこのときファイルの文字コードがETF8になっちゃうので、一旦ダウンロードしたあと、メモ帳アプリで開いて名前を付けて保存を選択したときに、文字コード:ANSI形式で保存しなおしてからチェックにかけると、うまくいきました。

あと、チェックOK後のファイルをダウンロードするときに、ファイル名が指定されるので変更せずにそのまま保存します。これをe-Taxソフトに組み込まないとなぜかエラーになるのでここも注意です。

 1つ組み込みに成功したら、残りの財務諸表も同じように繰り返します。e-Taxソフトでは一度、財務諸表XBRL形式の作成を行うと、追加組み込みができないようなので、一旦削除して、また次のファイルを組み込ませてを4つともそれぞれテストして、全部1つのファイルでまず組み込みできることを確認してから、また削除して、最後に4つのANSI形式のファイルをまとめてフォルダごと読み込ませると、4つをまとめて組み込み出来ました。(なんか、最後の最後にワナを仕掛けてられている気分でしたが、今までの苦労が水の泡になるので何とか組み込みできてよかったです。)

3.6.電子申告する

 作成した各種帳票やデータ取り込みが問題ないことを確認してからe-Tax、eLTaxそれぞれマイナンバーカードで電子署名してそのままデータ送信(このことを電子申告というようです)します。

 e-Taxについては、送信後、送達確認のメッセージが届くので、受信メッセージを確認し、メッセージ内の「帳票を表示する」ボタンにて、提出した書類一式をPDF出力できるのでこれを決算および税務申告書類一式として保存しておきます。eLTaxについては、送達確認メッセージの右下の「照会」ボタンにてPDF出力で保存しておきます。

4.納税

 今回は赤字決算でしたので、国税のほうは納税はしませんでした。源泉徴収された所得税の控除についての還付は電子申告した後日、問題なければ指定の口座に振り込まれる見込みです。還付申請すると税務調査が入りやすいという噂もありますが、特にやましい点もないので入ったら入ったなりに対応するしかないのですが、これについては後日どうだったか、アップデートしたいと思います。(6/24追記:なんと、電子申告してから2週間後に還付が無事に振り込まれました!不備があれば電話がかかってくる想定でしたが、電話はなくあっさりと還付されましたー。税務調査も今のところ音沙汰なしなのです。とはいえ復習のため図書館でこちら↓を読みましたが、最初から読んでおけばより自信を持って臨めたかなと思います。)


 地方税のほうはeLtaxソフトから納付情報発行依頼を行い、納付可能状態になるのを確認します。その後、私の場合はeLtaxのメッセージに従ってeLtaxのサイトからクレジットカードにて県と市町村向けの2件それぞれ支払いを行いました。手数料は1%未満でしたのでうまくクレジットカードを活用したいところです。クレジットカードの活用方法はまた別途お知らせしますね。

最後に

 一人社長をやってみようとチャレンジしている方には、副業を拡大しようとされている方や独立して起業しようとしている方などいらっしゃると思いますが、少しでもコストを圧縮したいのではないでしょうか。もちろん正しい税務処理を行う必要があるので税理士なしでも正しい税務の情報収集は必要です。誤った税務処理をして追徴課税されてしまっては本末転倒になってしまいます。とはいえ、時代進化とともに、昔に比べれば参考となる情報量と質は上がっているのではないでしょうか。私がチャレンジして完遂できたのはそういった時代進化や皆様のおかげでもあります。とはいえ、税法や法人にまつわる法律は年々複雑になっているようにも感じます。これからチャレンジしようとされる方にとって少しでも勇気になれば幸いです。

 最後に一言。やっと終わったー。1か月かかったー。でも次回からは多分1週間以内にできるはずー。

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